初めて横田さんから「オークウッド」についての構想を伺ったとき、提案性の強い洋菓子店を目指されていることを感じました。また、私が「消費者が感動するお店作りとは○○です」と言ってきたことをまさに、横田さんの口から伺い、消費者心理についてあえてお話しする必要はないと判断しました。きっとおもしろいお店が誕生することをこのとき確信しました。
実際に空間をデザインするうえで一番気を付けたことは、手作りの温もり感を大切にしながらも横田さんのこれまでのストーリーや実績がより印象的に感じられる空間を演出することです。そこで、私の中でひそかに考えていたデザインコンセプトが「大人の不思議の国のアリス」でした。
やさしい手作り感の中に神秘的な不思議さと時空をこえたおとぎの国に導く雰囲気を演出することをコンセプトにしました。決してかわいらしさだけの甘さを強調しないで、洗練されたデザイン性を感じさせながらも、人の温もりと優しさを漂わせる雰囲気をつくること。具体的には子どもが描くようなわかりやすいお家の形でありながらも、遠目から印象に残る存在感を表現すること。印象的な外観の色遣い、どっしりとした安心感のある柱と梁の太さ、おいしさを誘う内装の赤とオレンジ、木、タイル、石などの本物の素材の温もり、幾何学を意識したタイルの張り方とステンシルのデザイン、夢の中にでてくる不思議の国に登場しそうな陳列什器など…。
横田さんの作り出すお菓子の神秘的な世界と、現実の時空から離れた神秘的な空間へ誘う世界(店舗)を、重ね合わせることを今回は意識しました。まさに、何度足を運んでも、いつも新鮮な気持ちで「感動」を体験していただきたいという気持ちから生まれたデザインです。
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